美大受験のデッサンレベルと上達のコツ
ここでは、美大受験の実技で課せられるデッサンについて解説していきます。美大に合格するためには、どのくらいのレベルの画力が必要とされるの?デッサン上達のためのコツは?など、美大入試のデッサンについて知っておきたい知識をまとめました。
美大合格のデッサンレベルは?
どのくらいのレベルのデッサンが描ければ美大に合格できるのか、気になる受験生も多いのではないでしょうか。実際に合格した人のデッサンを見てみると、その美大に合格するために必要とされるデッサンレベルが分かります。
美大入試に合格できるデッサンの基準としては、「デッサンの基本ができている+表現力がある」ことが重要です。デッサンの基本というのは、「立体感」「明暗」「質感」の3要素をしっかり表現すること。それに加えて、現実と照らし合わせて正しく描くこと、構図や空間を魅力的に表現することも、デッサンを評価する際のポイントになります。
自分のデッサンレベルを知る
初心者は基礎的なことをしっかり押さえていることが重要です。
- 鉛筆の持ち方や消しゴムの使い方・紙の種類を理解する、簡単な影がつけられる
- 透視図法で正しい立体形が描ける、薄く細く無駄のない線が描ける
- 光と影の明暗の変化で立体感を表現できる
- 繊細な背景を描ける
- グラデーション、明度を5段階で理解、描くことができる
- 明暗境界線・反射・スフマートで立体感を表現できる、無駄のない線で球体を描ける
- パース(透視図法)で円柱や幾何学形を描ける
- パース(透視図法)で空間や顔の部位を描ける
- 明度を7段階で理解し、十二面体を描くことができる
ここからが中級者です。
- ポリゴン画法で円柱やリンゴをとらえられる
- ポリゴン画法でほかのモチーフもとらえられる
- 少ない筆数で短時間でデッサンできる
- 名画の模写ができる
最後に上級者です。
- 瓶や頭蓋骨、花など、様々な質感や形をポリゴン画法で表現できる
- 筋肉、頭蓋骨の模写などから正確に構造や形を理解できる
- 10段階明度が理解できる
自分のレベルを知り、どこから重点的に学習する必要があるのか認識することが大切です。
デッサンが上手くなるためのコツとは?
デッサン力を上げるためにまず必要なことは、とにかく沢山描いて練習することです。多くの美大受験生は、デッサン上達のために日々地道な努力を積み重ねています。ただし、間違った描き方をしていると上達しないので、デッサンの基本をおさえた正しい描き方を学ぶことが非常に大切になります。デッサンの表現力を高めるには、モチーフの配置で遠近感が分かる構図にしたり、濃淡や明暗をはっきりとさせて臨場感を出したりすると良いでしょう。
ただし、デッサンが上達してきたと思ったときが要注意です。自分のデッサンレベルを過大評価しないように、一度、難しい名画の模写をしてみるのもおすすめの方法です。上には上がいると知ることで、さらに努力できますし、ハイレベルなデッサンのテクニックを取り入れることができます。
練習あるのみ!初心者が描くべきモチーフ
初心者は自分の描きたいものを選びがちですが、デッサン初心者だからこそ基本となるモチーフをしっかりと押さえておくことが大切です。
幾何形体
初心者は透視図法で幾何形体を描いていきましょう。3次元の空間の広がりを理解することが目的で、正確に形を写し取ることが大切です。
徐々に難しいモチーフに挑戦していけるよう、以下のような順番で取り組んでみてください。
- 直方体・立方体
- 円柱
- 四角錐・円錐
- 球体
白いモチーフ
光による陰影を理解するために練習台になるのが白いモチーフです。モチーフにあたる光の陰影が見やすく、光を透過せずに陰影の変化が分かりやすいため、白い石膏像が使われます。石膏像は自分で用意するには値段が高いので、以下のような代用できるものを描いてみましょう。
- 白い卵
- 紙コップ
- トイレットペーパー
- 立体にした画用紙や布
固有色や質感がわかるモチーフ
形や陰影が理解できるようになれば、モチーフの固有色や質感を描く練習をします。練習方法としては、固有色と質感が違うモチーフを組み合わせて描く方法です。例えば、白いモチーフに黒い袋をかぶせる、金属や布など質感が違うものを組み合わせる、など。次のようなポイントに注意してデッサンしてみましょう。
- 光を反射するモチーフ:モチーフに映るものをよく観察する、光源が向いている最も明るい部分はどこか、明確に描く
- 光を透過するモチーフ:モチーフへ差し込む光の透過と反射の変化をよく観察しながら描く
- 質感の違うモチーフ:手触りや重さを肌で感じたり、面の変わり目や端々をよく観察して描き分ける
人体のモチーフ
無機的なモチーフを描けるようになったら有機的なモチーフの練習に入っていきます。身近なモチーフの良い練習台が人体です。人体を描く前に美術解剖学を理解することが大切です。美術解剖学を学ぶと、人体の骨、筋肉の構造と役割が理解できるようになります。
- 手:骨格情報を理解して描く、最も身近で様々なポーズができる
- 自画像:頭蓋骨の構造、眼球、鼻の軟骨、筋肉を理解し、デッサンから頭蓋骨が想像できるような絵を目指す
- 全身像:人体の胸部、腕部、脚部といった大きな構造からなる動きを学び、姿見などを使って全身像を描く
- 人体クロッキー:モデルを描く
複雑なモチーフ
写実的な絵画を描く場合、複雑なモチーフを描く細密描写の能力が必要です。はじめての人は「クルミ」を描くことをおすすめします。小さいですが細かい凸凹があり固有色の明度が低いため難易度が高くなります。ほかにも、松ぼっくりや靴、眼球なども細密描写に向いているモチーフです。
目を描くときは美術解剖学の知識を生かして細密描写すること、靴などの大きなモチーフは質感や固有色を意識するのはもちろん、細密に描くところと少し手を抜くところを描き分けることでメリハリが出せるので、いろいろと挑戦してみましょう。
人のデッサンから学ぶ
デッサン技術を高めるためには、できれば講師や絵のうまい人のデッサンを見せてもらい、絵のうまい人から学ぶことも大切です。美大の予備校に通っていない場合は、体験入学などで講師のデッサンを見せてもらうこともできるでしょう。予備校では、講師によるデモンストレーションを行い「見て学ぶ」機会を設けているところもあります。以下では、人のデッサンを見るときにチェックしておきたいポイントを3つ紹介します。
何を使って描いているか
デッサンをするとき、鉛筆や練り消しなど基本的な道具をそろえていると思いますが、人によって使う道具に違いが出ます。
- 鉛筆の量
- 消しゴムの種類(プラ消しやノック式)
- ガーゼ
- さっ筆
自分が持っていない道具があれば参考にして試してみたり、自分が持っている道具はその種類や数を把握しておきましょう。
手の動かし方、視線、フォーム
人のデッサンを見るとき、どうしても絵の方に集中してしまうかもしれませんが「どのように」描いているのかを見ることも大切です。
ジロジロ見て盗む
人のデッサンを見るとき、遠慮してはいけません。特に講師によるデモンストレーションを見るときは、たくさんのことを学ぶことができます。完成した絵を見るだけであればデモンストレーションを見る必要はありません。作品が出来上がる過程をジロジロ見て盗むこと、たくさん質問することで、得られる学びがあります。
絵は真似ではなくオリジナル、個性が必要だと思うかもしれませんが、真似ることで自分の技術にできることもあります。
デッサンを学びたいなら美術予備校
デッサンの基本や正しい描き方を、独学で身につけるのは難しいことです。美大入試のためにデッサンを上達させたいなら、美術予備校で学ぶのが近道。美術予備校では、自分のデッサンに対する評価・指導はもちろんのこと、他の受験生に対するアドバイスも聞けるので、独学では得られない多くの気付きや学びがあります。
デッサンは正しい描き方でコツコツと!
デッサンレベルを上げるには、地道にコツコツと練習することが大切ですが、遠回りしないためにも、正しい描き方を学び、上達のコツを掴む必要があります。美大受験のデッサン対策は独学では難しいので、美術予備校を検討してみましょう。確かなデッサン力と表現力を身につけて、美大合格を目指してくださいね。